のどぐろが有名な産地や漁場を公開
白身の高級魚として人気が急騰しているのどぐろ(正式和名:アカムツ)ですが、主な産地は島根と山口です。2県で全国漁獲量の7割ぐらいを占めます。
水揚げ量の上位5県は、山口県(670t)、島根県(550t)、鳥取県(100t)、石川県(60t)、新潟県(50t)です。
本記事では主に水揚げされる都道府県を産地として紹介します。
(注)水産庁は魚介類の産地を捕れた海域で統一するよう推進してはいますが、現在は水揚げした港でも良いことになっています。(水産庁ガイドライン)
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島根県産
アカムツを語る上では一番に名前を挙げたい産地です。
島根県には全国に13しかない「特定第3種漁港」の浜田漁港があります。
カレイは全国1位の水揚げで、アナゴ、サワラ、アジも上位5位にランクインしています。
島根県ではノドグロの水揚げ量は2018年までは増加の一途でしたが、2019年からは横ばいです。2011年には260tだったものが、2018年には550tと大漁です。
また、浜田市は水産加工が全国的に有名で、主に山口県(有名な下関)で水揚げされたノドグロも干物などに加工して全国に流通させています。
皆さんもノドグロの開きを口にしたら島根県産である確率が高いはずです。
ノドグロの質
島根では山陰沖での漁が中心ですが、この海域は特にエサが豊富なため、脂乗りが最高です。
エサは豊富なだけでなく、「カラヌス」と呼ばれる脂質の多いプランクトンが生息しています。
このプランクトンのおかげで周辺海域のノドグロはたっぷりと脂肪分を蓄えてくれるのです。
▽関連記事→島根県浜田産のノドグロが一番脂乗りの良い理由
ノドグロのブランド化
のどぐろが穫れる漁場は色々ありますが、ブランド化までされているのは2種類だけです。
島根県の「どんちっちのどぐろ」と、長崎県対馬「紅瞳」です。
この島根県浜田市では更にのどぐろを市の魚に指定しているほどで、島根沖で特定の漁船が夏から冬にかけて水揚げしたのどぐろを「どんちっちのどぐろ」としてブランド化しています。
ふるさと納税の返礼品としても取り扱われています。
煮つけ、干物セット
他にも、長崎県も有名なのどぐろの産地です。
対馬では目が赤いことにちなんで「紅瞳」としてブランド化されています。
山口県産-下関市中央卸売市場(通称:下関漁港)
全国でのどぐろの水揚げが最も多いのが山口県です。県全体で670t(2018年調査)あります。
下関といえばトラフグやアンコウが有名ですが、実はノドグロの水揚げ量が国内で最も多いことはあまり知れていません。
のどぐろは、秋口から冬にかけて水揚げが最大となります。
その後はアンコウ漁がシーズンとなります。
ノドグロ水揚げ量日本一にも関わらず、あまり有名でない理由は大きくは2つあります。
水揚げされたのどぐろは都会へ流通
東京、名古屋、大阪と消費が多い都会へ鮮魚として流通するものがほとんどです。そのため、地元の人ですら水揚げ量が多いことを知りません。
資金力豊富な仲買人が買い占めて利益の高い都会へ流通されるケースもあるようです。
加工技術が他県に勝る
島根県は干物加工の歴史があり、昔から下関で水揚げされたのどぐろの加工を島根で行うケースが多くあります。
関西では島根県浜田産の干物が一般的なスーパーでも多く流通しています。地元の食文化として定着していないのもこういった理由があります。
のどぐろは、特に脂乗りが多いので、鮮魚ではどうしても時間がたつと臭みがでてしまいます。臭みを防いで長期保存を可能とする代表的な方法が干物なのです。
漁法
下関では、毎年8/16〜翌年5月15日まで底引き網で漁をします。底引きといっても漁船2艘が1組で1つの網を引く漁法です。浜田でも同じ漁法で、中国地方、九州地方では主力の漁法です。
長崎県産
長崎県では、先にご紹介した島根県同様にノドグロをブランド化して売り出しています。
目が赤いことにちなんで「紅瞳」。2005年頃からブランド化に着手し、2017年現在では平均単価を60%upさせることに成功しています。
主な出荷先は福岡、金沢、関東方面で、最近では大阪を中心に関西方面への売り込みも強化しています。
長崎漁港も全国に13しかない「特定第3種漁港」の一つで、ノドグロ以外の魚種ではハモ、アジ、サワラ、ヒラメなどが全国上位を占めます。
対馬近辺(九州と韓国の間の島)が主な漁場で、良質なノドグロが漁獲される海域でもあります。
近年では山口県、島根県の間でのどぐろの多くの水揚げにより、長崎の漁獲量は減少傾向にあります。
石川県産
石川県には69の漁港があり、そのうち2港は全国的に利用される第3種漁港です。
(第3種漁港 全国に114港)
水揚げは、マイワシ、マアジ、カタクチイワシ、スルメイカなどが多く、産地として有名です。
金沢では佐渡ヶ島から能登半島沖にかけてのどぐろが取れますが、秋口ののどぐろが特に脂乗りが良いとされて高値で取り引きされています。
ノドグロの水揚げ量は、2016年の統計によるとおよそ45t。2018年は60tです。
水揚げ量は30t〜50t前後で推移しており、その傾向は大きくは変わっていなかったですが、ここ数年は増加傾向にあります。
(石川県 漁獲統計資料より)
最近のノドグロブーム以前より地元で消費されるケースが多かったことがわかります。
石川県内では実際にのどぐろを自慢とする料理店が多くあり、ノドグロが生活に溶け込んでいます。
新潟県産
新潟には47の漁港があり、石川県と同じく2港が全国利用される第3種漁港です。
新潟では漁獲量が変動しやすい傾向があります。
2002年には60tの水揚げがありましたが、2014年には44t、2018年は50t
(新潟県 水海研だより)
新潟県内の主に山北、岩船、新潟、筒石の底びき網で多く漁獲されます
新潟県では7〜8月は資源保護のため、底曳き網が禁漁期になることからその間は延縄で漁獲されます。
新潟県産は8月から9月が旬で焼き魚として食べることが多く、次いで煮魚、刺身が一般的です。
徳島県産
日本海側を離れて太平洋側の徳島です。
全国区の第3種漁港は1つしかありませんが、有名な水産物は多くあります。
水産物として有名なのは、ワカメ(6,842t)、ブリ(3,382t)、イセエビ(72t)、アワビ(64t)、タチウオ(433t)です。
(※カッコ内は2011年の水揚げ量)
ノドグロは2014年のデータで16tの水揚げです。
漁獲量が多いのは水深 100〜200m の大陸棚に面した県南域です。
他の石川県や新潟県と比べると1/3程度と少なく、近年県を挙げてノドグロの漁獲量増加に力をいれています。
年間を通して春から夏にかけての4月〜8月に多く、特に6月〜8月が最も水揚げされます。
9月、10月はイセエビ漁に転向するため、ほとんど獲れませんが11月から翌春までゆるやかに増加します。
県内でも流通はしていない上、やはり日本海側や対馬のような脂の乗りは無いという情報もあります。
(※脂の乗りは情報の正確性は不明。地元の情報提供者による意見の一つです)
まとめ
今回詳細を紹介していない県を含め、漁獲量の順位は下記のとおりです。
- 山口県(670t)
- 島根県(550t)
- 鳥取県(100t)
- 石川県(60t)
- 新潟県(50t)
- 福井県(29t)
- 徳島県(16t)
- 富山県(15t)
- 秋田県(15t)
- 山形県(14t)
- 長崎県(10t)
- 京都府(8t)
- 青森県(6t)
(注)各県の漁協や水産資源研究所の情報をもとに掲載しております。各県の集計時期に差があり、参考としてご活用ください。
ノドグロの養殖技術はまだ確立されていませんが、いずれは大量に養殖が可能となっていつでも食べられる魚になるかもしれません。
仮にそうなったとしても私は産地にこだわった「天然のノドグロ」しか食べないと思います。
天然でも味が明らかに違うので、微妙な自然のバランスは再現できないと思います。
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